営業活動の志向性の変化

orientation
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志向(オリエンテーションー, Orientation)とは

ビジネス上の優先順位、もしくは中心的な関心領域は、時代の変化とともに変遷しています。これは営業活動にとっても同様です。こうした中心的な関心領域のことを、志向(Orientation)と呼びます。ここでは、1940年代から今日にいたるまでの、営業活動における志向の変遷を見ていきましょう。

製品志向(Product Orientation)

第二次世界大戦以後の復興期(1945年以降)は、世界中の企業で生産能力の増強が追求されました。当時の経営上の課題は、営業による販売活動よりも生産活動に重点がおかれました。これが製品志向の時代です。製品志向の経営活動は、その後、生産管理、工場の効率的オペレーション、JIT、QC活動などに発展していきます。

販売志向(Sales Orientation)

企業の生産能力が回復するにつれて、次第に販売活動に焦点が移っていきました。それと同時に、悪名高いハードセル(hard sell、(売らんかな主義)と呼ばれる、営業力による売上実現の追求を至上命題とする動きが出てきました。また、製品の差別化が重視されるようになりました。

そうした中で、マーケティング活動は、マス・マーケティングの道を突き進みます。マーケティング全盛時代になりますと、マーケティング・ミックスなどの概念が広がりました。マーケティングや営業活動のテクニカルな側面が重視され、いかに顧客に買わせるか、が優先的に追求されるようになりました。端的に言えば、うまいこと言って顧客を「食い物にする」方向性を追求するようになったわけです。

マーケティング志向/市場志向(Marketing Orientation/Market Orientation)

1970代に入って、製品の増殖とセグメント・マーケティングが重視されるようになってきました。顧客・市場を特性によって細分化(セグメント化)して、個別対応による効率化の追求がおこなわれました。また、コンサルティング営業という新しい考え方が生まれてきました。

1970年代後半に入ると、顧客を分類するようになりました。大口顧客やキー(主要)顧客を特定し、それぞれに担当の営業員・マネジャーや役員が生まれました。また、営業活動はマーケティング活動の重要な要素であるという認識が広がりました。

1980年代に入ると、購買部門に変化が起きます。サプライヤー・セグメンテーション戦略や高度サプライチェーン管理モデルなどの新しい購買手法が登場します。これに対して、販売する側にも抜本的な見直しが必要とされるようになります。 ただし、この時期は○○志向と呼ばれる目立った概念は生まれていません。

顧客志向(Customer Orientation)

2000年代頃から、顧客関係管理(CRM:Customer Relationship Management)という概念が注目されます。顧客志向の始まりです。顧客志向は、もともとはマーケティングで提唱された概念です。それが企業活動全体に広まり、営業活動にも大きな影響を及ぼしました。その結果、営業活動の方法に大きな変化が見られるようになり、営業管理(Sales Management)が、注目されるようになりました。営業管理のうまい/下手が、企業の業績に大きく影響するようになったからです。

ここでみたきた志向の違いが、営業員の業績におよぼす影響を分析した研究があります Goad and Jaramillo(2014)。予想に反して、販売志向は業績に悪影響をおよぼすとはいえないという結果に終わりました。業績向上に効果的な志向は、状況によって異なるということでしょう。

参考資料

Goad, E. A. and F. Jaramillo (2014). “The good, the bad and the effective: a meta-analytic examination of selling orientation and customer orientation on sales performance.” Journal of Personal Selling & Sales Management 34(4): 285-301.

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