過去40年間の営業研究のトレンド
営業研究に特化した学術専門誌
現実世界では、時代の変化とともに関心の領域も変化していきます。経営学もその例外ではありません。営業研究のテーマにも、はやり廃りがあるのでしょうか?
Journal of Personal Selling & Sales Management(JPSSM)という、営業研究に特化した学術専門誌があります。
過去の営業研究をテキストマイニングしてみると
私は共同研究者とともに、このJPSSMの創刊からの40年間(1980-2019)に掲載された論文のテーマについて、機械学習(トピックモデルによるテキストマイニング)によって分析をし、論文のテーマの抽出をおこないました(Kitanaka et. al. 2021)。
分析対象となったのは、784本の論文です。分析の結果から得られた論文のテーマ一覧が下の表です。年代ごとに、研究テーマが移り変わっていることがわかります。
営業研究テーマ | 全期間 (%) | 1980s (%) | 1990s (%) | 2000s (%) | 2010s (%) |
---|---|---|---|---|---|
ダイバーシティ&インクルージョン | 8.4 | 11.9 | 12.8 | 7.6 | 2.3 |
セールステクノロジー 1.0 | 8.2 | 17.1 | 11.5 | 4.9 | 2.2 |
営業員の対人コミュニケーション | 8.2 | 14.8 | 12.3 | 3.9 | 4.0 |
リーダーシップとアダプティブ・セリング | 7.6 | 0.6 | 2.7 | 10.9 | 13.9 |
営業員の評価とトレーニング | 7.4 | 16.0 | 12.2 | 3.3 | 1.0 |
営業員の離職率 | 7.3 | 6.1 | 8.9 | 6.9 | 7.0 |
セールステクノロジー 2.0 | 6.8 | 0.7 | 1.3 | 7.0 | 16.2 |
営業研究における評価尺度 | 6.1 | 7.0 | 7.4 | 6.9 | 3.3 |
パフォーマンスの計量モデル | 5.9 | 7.6 | 6.6 | 4.8 | 5.0 |
営業活動におけるコミットメントと信頼 | 5.3 | 2.4 | 4.9 | 5.9 | 7.2 |
報酬・ボーナス | 5.2 | 9.6 | 5.6 | 4.5 | 2.5 |
営業員の成功と失敗 | 4.8 | 0.9 | 3.1 | 6.2 | 7.7 |
顧客志向 | 4.4 | 0.3 | 1.3 | 4.8 | 9.8 |
買手と売手の関係 | 4.1 | 0.1 | 2.7 | 11.5 | 1.0 |
インターナショナル・セールス | 3.6 | 3.3 | 2.8 | 3.4 | 4.9 |
セールス・チーム | 3.5 | 1.0 | 2.7 | 5.5 | 3.9 |
営業研究の手法 | 3.2 | 0.7 | 1.4 | 1.9 | 8.0 |
2010年代以降のトップ3
2010年代以降の傾向のトップ3をあげてみると、以下のようになります。昨今の関心の対象がうかがえますね。
- セールステクノロジー 2.0
- リーダーシップとアダプティブ・セリング
- 顧客志向
アダプティブ・セリングは、近年になって注目されてきたコンセプトです。営業活動で顧客と接触中に、相手の反応によってこちらの当初の計画や目標を変更することです。アダプティブ・セリングについては、別の記事で解説します。
参考資料
Hideaki Kitanaka, Piotr Kwiatek & Nikolaos G. Panagopoulos (2021) Introducing a new, machine learning process, and online tools for conducting sales literature reviews: An application to the forty years of JPSSM, Journal of Personal Selling & Sales Management, Volume 41, Issue 4 (2021.12), Pages: 351-368, DOI: 10.1080/08853134.2021.1935976