業務分担の割合
密接に業務分担をおこなっている営業部門とマーケティング部門ですが、業務分担の割合は一定ではありません。割合の違いは、企業風土や業界の特性、製品特性、顧客の状況等、さまざまな要因によって影響されます。下の図には、割合の違いによる4つのバリエーションが示しています。
両部門の業務がほぼ独立
左上のパターンの場合(①)は、両部門の業務がほぼ独立しておこなわれ、共同活動はほとんどありません。同じ会社と言うよりも、違う会社がそれぞれ業務委託をおこなっているようなものです。こうした場合には、それぞれの部門の業務効率はあがります。ただし、ひとつの会社としてのシナジーが充分に活かせていないかも知れません。
両部門の協調度合いが高い
右上のパターンの場合は、両部門の協調度合いが高くなっています。会社内での両部門の活動が調整され情報交換を活発におこなうことで、それぞれの長所を活かすことができる可能性が高いでしょう。その反面、調整の手間が掛かり、環境の変化や顧客からの要望に迅速に応えられないリスクも考えられます。
営業主導型
下の段の二つのパターンでは、営業部門もしくはマーケティング部門のどちらか一つの部門が主導権を握っている場合です。一般的にいえば、BtoBビジネス(産業財)の場合には、営業主導型の組織が多いようです。営業部門が顧客との良好な関係のなかで提供するサービスが、差別化の要因を生み出しています。その場合には、マーケティング部門の役割は、営業部門の支援と位置づけられます。
企業が、充分に差別化された製品やサービスを提供している場合もあります。そうした企業の多くでは、研究開発部門が優れています。それとは全く反対に、製品やサービスで他社との差別化が全くできていない企業が、営業力にのみ頼った事業展開をする場合もあります。
マーケティング主導型
マーケティング主導型は、一般にはBtoCビジネス(一般消費財)の場合が多いようです。宣伝広告や販売促進といったマーケティング活動による、消費者からのプル(引き)を原動力としています。この場合の営業部門に期待される役割は、マーケティング戦略にもとづく販売力の展開が主となります。
IT業界では、技術力(商品力)とマーケティング力がトレードオフにある場合が多いようです。技術力がある企業は、えてしてマーケティングが下手で、市場において成功できないというパラドックスがよく起こりました。逆に、技術力に劣っているから、宣伝で売るという事業展開が成功する事例もあります。
参考資料
Zolteners, A., P Sinha, and A. E. Lorimer (2010), “Aligning sales and marketing to enhance customer value and drive company results,” in Alice M. Tybout and Bobby J. Calder, ed., Kellogg on Marketing, 2nd Edition John Wiley & Sons, Inc., pp. 373392.